感謝の木曜日、ブラックな金曜日…?

ケリアブログ

さて、ハロウィーンを過ぎて早くも11月、世間はクリスマス商戦の時期に入りましたね! デパートやショッピングモールへ行くとクリスマスソングが聞こえてきて、あちこちにクリスマスツリーが飾られ、クリスマスプレゼント用のアイテムがたくさん売られています。日に日にクリスマス気分が盛り上がってきますね。

お中元やお歳暮など従来の贈り物のしきたりがだんだん盛り上がりに欠けるようになってきたこの頃、クリスマスは日本でも小売業界屈指の書き入れ時です。オーストラリアやヨーロッパでも事情は似たり寄ったりで、昨日までオレンジと黒のハロウィーン用のお菓子が所狭しと並んでいたスーパーのお菓子の棚に、今日は赤と緑のクリスマスチョコレートがずらり……となっています。

だがしかし! 世界中でし烈なクリスマス商戦が繰り広げられているこの時期に、とある経済大国が完全に出遅れている様子……?

そこで質問です。11月中旬現在、いまだにクリスマスビジネスに参戦することができず悶々としているその国とは?

アメリカ合衆国です!

そう、あろうことか、ビジネスの最先端を行くあのアメリカです。お店に行ってもいたって通常営業中。よーく見ると、大型店舗の片隅でひっそりとプレゼント用の品が置いてあったりはしますが、クリスマス気分が盛り上がっているとはとてもじゃないが言い難い。

いったいアメリカに何が……?

実は、アメリカにはクリスマスの前にクリアしなければならない伝統的な祝日があるのです。それが、11月の第4木曜日にやってくる感謝祭(Thanksgiving Day)。

北アメリカに最初の入植者であるPilgrim fathersが渡って来た時、持ってきた作物の種が新大陸の土壌や気候に合わず、あわや餓死寸前となりました。そこへ現地人がトウモロコシや乾燥果物など現地の食べ物を持って来てくれたという逸話があり、それを記念する日とされています。もっとも、アメリカインディアンに言わせるとこの連中がのちに自分たちの社会を圧迫することになる疫病神だったわけで、この日はお祝いの日ではなく鎮魂の日としている部族もいるそうです。

基本的にThanksgiving Dayの木曜日と翌日の金曜日が祝日扱いになるため(州によっては金曜日は平日のケースもありますが)、木曜日から日曜日までの仕事や職場が休みの4連休になり、多くの人が故郷に帰ったり、親戚の家に集まったりします。そのため、前日の水曜日や連休最終日の日曜日の午後は高速道路や空港が帰省やUターンで非常に混雑します。(11月後半にアメリカへ旅行する人は気を付けてくださいね)。

さて、典型的なアメリカ人家庭では子供を連れておじいちゃんやおばあちゃんの家に集まります。小さな子供たちは遠く離れて住むいとこたちと一緒に遊ぶ良い機会。感謝祭のディナーに欠かせないのは七面鳥の丸焼き。2015年の感謝祭では、アメリカ全土でなんと4千5百万羽の七面鳥が消費されたとか……。

七面鳥の付け合わせはクランベリーソースが定番。残念ながら日本では生のクランベリーは手に入りませんが、アメリカでは今の時期スーパーに行くと大袋に詰められてパウンド(約454グラム)単位で売られています。クランベリーが新鮮かどうか調べるには、テーブルの上で一粒ずつ落として弾ませてみます。ぽんと跳ねれば新鮮。跳ねずにころんと転がってしまったものは捨てます。

大量のクランベリーをたっぷりの砂糖とレモン汁(またはオレンジジュース)を加えて煮詰めればクランベリーソースになりますが、最近は面倒なので瓶詰めや缶詰を買ってくる家庭の方が多いです。クランベリーにはペクチンが多く含まれているので、ゼラチンなどを加えなくてもジャムのように固まります。缶詰を開けると缶の形そのままでにゅるっと出てくるので、これを輪切りにして七面鳥の丸焼きに添えます。七面鳥は鶏肉よりずっと淡白でぱさぱさしているので、酸味のあるソースがよく合います。

七面鳥の他には、スイートポテトのマッシュやいんげんのキャセロール(オーブン焼き)、パンプキンパイなどが定番。「パンプキンパイはつい先日ハロウィーンでも食べたよな…」とか、「スイートポテトはクリスマスにまた出てくるんだよな」とか、「いや、うちなんかクリスマスもまた七面鳥だし」とか、細かいことはどうでもよし。お腹がくちくなれば心もまた温まる。久々の家族親戚同士の団欒を楽しみましょう。

で、一夜明けて翌日の金曜日。アメリカ全土に高らかにゴングが響き渡ります!

いや、実際に聞こえる訳ではないけれど、人々の心の中には高らかに響き渡るのです。言わずと知れたクリスマス商戦の始まりを告げるゴングが。

この日、ショッピングモールやデパート、大型スーパーなど、ありとあらゆる小売店で一斉にセールが行われるのです。まだ木曜日の間はみんなしれっとした顔で感謝祭をお祝いしながらも、心の中ではクリスマスのことを考えてうずうずしているのです。あと少し、あと少しで感謝祭が終わる……ということは、クリスマスシーズンが始まる!

ヨーロッパや南半球、そして日本に後れをとること約一か月。ここで一気に失われた時間(と利益)を取り戻さなければ経済大国アメリカの名がすたる!

というわけで、人々はショッピングに殺到します。いや、実際には開店予定の何時間も前から店の前で並び始める人も多いのです。開店と同時に店内になだれ込んで、他の人に取られる前に目当ての品を格安で手に入れるために。商店もまだ暗いうちにオープンするところが多く、日付が変わった0時ちょうどならまだしも、極端な場合は感謝祭の木曜日が終わらないうちから開店してしまう店も。

とりあえず画像で見てみてください。

ひええぇぇ……。

みなさん我先にと押し合いへし合い、他人を押しのけ、引き倒し、時には一つのアイテムを本気で奪い合い、今まで我慢していたショッピング熱を一気に発散させています。これは2018年のニュースですが、途中で警察の車が出てくる場面は、とあるショッピングモールでアイテムの取り合いから発砲事件にまで発展し、12才の女の子が犠牲になったそうです。ひどい……。

この感謝祭の翌日の金曜日、「ブラックフライデー」と呼ばれています。もともとは商店が莫大な利益を上げて「黒字」になるという意味だったらしいですが、ほとんどの人が別の意味でこの日を「ブラック」だと思っています。ほんの数時間前までは家族や親戚と和気あいあいとした感謝祭のディナーを囲んでいたのに……。

実は、感謝祭に関しては、実際に11月の第4木曜日にピルグリム・ファーザーズがインディアンに救われたという記録はどこにもありません。同じ北米の国カナダでは10月の第2月曜日に感謝祭を祝います。

じゃあなぜそんなにクリスマスに近い時期に感謝祭を設定したの?とつっこみたくなりますが、昔のアメリカ人に言わせると……

だって、もともと感謝祭の方が先に祝われていたんだよ。クリスマスの方が後から来たんだ!

ちょっと待って。クリスマスってコロンブスがアメリカに上陸するより1500年近く前に生まれたイエス・キリストの誕生日でしょ? なぜ感謝祭の方が先になるの?

当然、そういう疑問が浮かんでくると思いますが、それは次の歴史・文化トピック「クリスマス」の記事で詳しく説明します。アメリカの伝統にのっとり、今年の感謝祭の11月28日以降にアップロードしますので、お楽しみに!

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