ビートルズを聴こう!

ケリアブログ

10月1日は国際音楽の日だそうで、ゆかりの木では10月に入ってから実習期間を中心に音楽イベントが続いています。

メンバーの好みを取り入れながら主にポピュラー音楽を中心に聴いていますが、ポピュラー音楽の歴史に大きな影響を与えたバンドといえばビートルズ。ビートルズがレコードデビューしたのも1962年の10月。そこで、ビートルズの主な曲を、デビュー当時から解散直前までの軌跡をたどりながら聴いてみることにしました。

ポピュラー音楽は、ライブやコンサートに行ったり、CDを買ったり、音楽アプリでダウンロードしたりと積極的に聴こうとする場合はもちろんのこと、テレビ番組のBGMや、ショッピングモールやスーパーの店内などで、意識しなくても常に身近に流れているものです。でも、曲の形式、拍の数やメロディの繰り返しかたなどを意識して聴く機会はそれほどない人がほとんどではないでしょうか?

ポピュラー音楽と言ってもいろいろな種類があります。バンドやアーティストの名前、曲の意味などの予備知識が無くても、クラシック、演歌、ジャズ、ラップなどのジャンルが聴き分けられる人は多いでしょう。そして、それぞれのジャンルの中にはさらに詳細な「聴き分け要素」が入っています。今回はバンドの変遷や背景などには軽く触れる程度にして、「聴く」ことを中心に鑑賞しました。

ポピュラー音楽の基本的な構造

ビートルズの曲に入る前に、ポピュラー音楽に分類される曲の基本的な構造について説明します。バンド経験のある方などはすでにご存知のことと思いますので、とばしてくださいね。

20世紀半ば頃から台頭してきたいわゆるポピュラー音楽、あるいはポップスと呼ばれる曲は、一定の共通した構造を持っています。

分かりやすいのが、日本語で「サビ」、英語では「chorus」と言われる部分で、特に80年代以降の音楽ではその曲が一番盛り上がる代表的なメロディとして作られています。CMなどに抜粋されてよく使われるので、最初から最後まで通して聞いたことがなくてもサビだけは知っている、という曲も多いのではないでしょうか。ほとんどのポピュラー曲はサビ(chorus)とサビ以外のメロディ(verse)の2種類のパーツから成っています。日本語では曲の冒頭から出てくるサビ以外のメロディを「Aメロ」と言います。

昔は冒頭から出てくるAメロの部分が最も印象に残るタイプの曲が多く、サビはちょっとした箸休め、気分転換のような役割でした。お寿司のワサビのような役割であることから「サビ」という俗名がついたという説もあります。アメリカでは映画『オズの魔法使い』挿入歌『Over The Rainbow (虹の彼方に)』、日本では坂本九さんの『上を向いて歩こう』などがAメロ主体の代表的な例で、当時の曲はサビのあと必ずAメロに戻ってくる「AABA形式」が主流でした。時代が下るにつれサビの重要性が高まり、現在ではサビで盛り上がったまま終わる曲がほとんどです。

一番シンプルな曲はAメロとサビの繰り返しだけで構成されていますが、Aメロとサビの間に補足的なメロディが足されることもあります。英語ではverseとchorusをつなぐ部分という意味で「bridge」と呼ばれますが、日本語ではAメロに準じる第2のメロディという意味で「Bメロ」と言います。さらに、Bメロに続く「サビ」を「Cメロ」という言い方をする人もいます。上記のAABA形式ではサビの部分が「B」にあたるのでちょっとややこしいですが、今回は日本語表現の「Aメロ、Bメロ、サビ」を使って説明していきます。

さて、それぞれのメロディの構造を詳しく見ていきましょう。「1、2、3、4、1、2、3、4…」あるいは3拍子の曲だと「1、2、3、1、2、3…」と数えながら聴くと、ほとんどのメロディが4拍または3拍×8セット、つまり8小節から成っているのが分かると思います。しかし、Aメロの部分は必ずしも厳密に8小節とは限りません。AABA形式では最後のA部分がメロディ後半の4小節だけのこともあります。また、ビートルズや他のバンドの曲に大きな影響を与えたアメリカ南部発祥の「ブルース」は、一つのメロディが12小節から成っています。

ポピュラー音楽は他にもクラシックや南米のラテン音楽、その他の民俗音楽などに影響を受けています。ラテン音楽のメロディも基本的には8小節ですが、最後の部分が繰り返しや音の延長などで1、2小節長くなることが頻繁にあります。形式以外でも、ビートルズの後期の曲はインド音楽の楽器を取り入れていることでも有名ですね。

それでは、ビートルズの代表曲の「聴きポイント」をさくっと解説します。

著作権の関係から、音源や歌詞をそのままこのブログに載せることはできません。公式ダウンロードやレンタルなどでお聴きください。

She Loves You(シー・ラブズ・ユー)

レコードデビュー前からヨーロッパでライブ活動をしていたビートルズ。初期に何度かバンドメンバーが入れ替わりましたが、最終的にジョン・レノン、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ジョージ・ハリスンの4人で1962年にデビュー。翌年には『シー・ラブズ・ユー(She Loves You)』がイギリスで記録を塗り替える大ヒット、不動の大スターとなります。

シー・ラブズ・ユーの音楽的特徴は、冒頭のイントロ(前奏)の部分がいきなりサビのメロディで始まることでしょう。最近の曲ではよく使われている手法で、日本ではいきものがかりの『ありがとう』などが有名な例です。1960年にに流行ったマーク・ディニングの『Teen Angel」などサビを前面に出す曲はぽつぽつ出てきていましたが、それでもAメロが主役を務めることが圧倒的に多かった時代。シー・ラブズ・ユーの大ヒットでそれまで脇役扱いだったサビの存在意義が大きく変わるきっかけとなりました。

それぞれのメロディがきっちり8小節ずつですが、AABA形式と違い、現在のポップスと同様に曲の最後をサビのメロディで締めています。まだ若いバンドメンバーが、比較的新しい形式で元気いっぱいに歌い上げるこの曲。当時の若者、特に女性が熱狂したのもうなずけます。

I Want to Hold Your Hands (抱きしめたい)

1963年のI Want to Hold Your Hand (邦題は『抱きしめたい』)では、ビートルズの曲で初めてマルチトラックが採用されました。それまでは、バンドメンバー全員で最初から最後まで通して録音しながら演奏する、いわゆる「一発録り」が主流だったのですが、マルチトラックの技術によりあらかじめ録音しておいた音源に後から他のパートの演奏を重ねることが可能になりました

曲の形式はAメロ主体のAABA形式で、サビが出てきた後に必ずAメロに戻り、曲の終わりもAメロで締めています。でも、拍を数えながら聴いてみると、Aメロが8小節で終わりません。曲のタイトルでもある「I want to hold your hand」を2回繰り返す4小節が追加されて、ブルースと同じ12小節のメロディになっています。ただ、サビの部分は8小節です。音楽のジャンルを厳密に定義するのは難しいのですが、Aメロがブルース風の12小節であっても、「middle 8」と呼ばれる8小節のサビがあれば純粋なブルースではなくポピュラー音楽とされることが多いようです。

翌1964年の『A Hard Day’s Night』も同じ構成で、Aメロが12小節、サビが8小節となっています。ビートルズ以外でも50年代から60年代にかけてよく使われた形式でしたが、最近はほとんど聞きません。

Yesterday (イェスタデイ)

1965年のYesterdayは、ビートルズにさほど詳しくない人でも聴いたことがあると思います。後にこの曲をカバーしたアーティストも多く、いろいろなヴァージョンを聴き比べてみる楽しみもありますね。

この曲にもある特殊な要素があります。1小節4拍の曲ですが、前述の2曲と同じように小節を数えながら聞いてみてください。

…Aメロが7小節しかないことにお気づきですか? 8小節メロディが基本のポップスの中でも、7小節メロディというのはとても珍しいケースです。しかし、メロディの流れ方はとても自然で、「何か足りない」という印象は与えません。

ただ、サビはやはり8小節で、「middle 8」の基本は崩れていません。

ちなみに、この時期のビートルズの曲はほとんどがジョン・レノンとポール・マッカートニーの連名で出されていますが、この曲はマッカートニーがほぼ単独で作曲したと言われています。

Strawberry Fields Forever (ストロベリー・フィールズ・フォーエバー)

様々な理由から、ビートルズは1966年以降ツアーを控え、スタジオレコーディングに専念し始めます。1967年のストロベリー・フィールズ・フォーエバー(Strawberry Fields Forever )はスタジオ時代初期の代表曲です。レノン–マッカートニーの連名の作曲ですが、ジョン・レノンが幼少期に「ストロベリーフィールズ」という孤児院の庭で遊んだ思い出をモチーフにしているとのことで、レノンが中心になって作った曲なのかもしれません。

電子楽器の一種であるメロトロンや、スワラマンダルと呼ばれるインドの楽器を使い、かなり前衛的なサウンドになっています。リズム的にはスローなテンポにも関わらず少し複雑です。基本的には4拍子ですが、今までの曲と同様に数えながら聞いてみてください。

1、2、3、4…とちゃんと数えていたはずが、いつの間にかずれていて「あれ?」となりませんか? ちょうどタイトルと同じ「strawberry fields forever」という言葉が出てくるあたりです。実は、「strawberry fields」のところは3拍、その直前には2拍の2つの「拍足らず」の小節が入るのです。4拍パターンの途中で「1、2、1、2、3」と入れるときれいにはまるはずです。

All You Need is Love (愛こそはすべて)

『愛こそはすべて』もレノン–マッカートニーの連名作ですが、実際にはほぼレノンが書いたそうです。そして、この曲にも変則的なリズムが出てきます。基本はやはり4拍子の曲ですが、冒頭から2小節ごとに拍足らずの3拍だけになっていて、「1、2、3、4、1、2、3」の7拍パターンが続きます。

他にも、イントロにフランス国家のラ・マルセイエーズが使われていたり、曲の終わりの部分(コーダ、あるいはアウトロ)にはバッハのインベンションやジャズナンバーの『In The Mood』のイントロ、ビートルズ自身の『イェスタデイ』や『シー・ラブズ・ユー』などのメロディがコラージュ状に引用されています。

マッカートニーは美しいメロディを書くことに定評がありましたが、レノン中心の作品ははこういった技巧的な曲が目立ちます。

Let It Be (レット・イット・ビー)

これもレノン–マッカートニー名義の曲ですが、ほぼマッカートニー単独で作曲したようです。『レット・イット・ビー』はシングルとしては1970年4月にビートルズが解散する1ヶ月前、同名のアルバムは解散後にリリースされ、事実上最後の作品となりました。

シンプルな8小節メロディ、そしてAABA形式と原点に戻ったかのような造り。後期の作品ながら、ビートルズの代表曲を一つだけ選べと言われたらこの曲を挙げる人も多いことでしょう。

解散の理由は、いち早く脱退したマッカートニーが他のメンバーを相手取って訴訟を起こしたこともあり、様々な憶測が飛び交いました。しかし、その根底にあったのは案外シンプルな問題かもしれません。

前述の通り、解散前にはレノン–マッカートニーの連名を貫きながらも、2人の作風の違いはかなり顕著でした。他の2人も含め、10年もバンド活動を続けているうちに、各自の音楽性はそれぞれ別の方向に進んで行ったのはむしろ自然なことなのでしょう。

4人1組であまりにも有名になり過ぎてしまったため、独自の個性を持った1人の人間である前に、つねに「ビートルズの一員」として見られてしまうことに息苦しさを感じていたとしても、不思議ではありません。

ビートルズ解散後、1980年にはジョン・レノンがファンを自称する男に射殺されるという事件が起こります。あとの3人はそれぞれ独立した活動を続けながらも,ジョンが生前レコーディングしていた音源を含めたアンソロジーを発表。しかし、2001年にはジョージ・ハリスンも癌で他界してしまいます。

それでも、ビートルズの活躍は今でもレジェンドとして語り継がれ、その作品は多くのアーティストにカバーされ続けています。今回一緒に曲を聴いたゆかりの木メンバーも、ほとんどがビートルズ解散後生まれですが、各自心に響くものはあったようです。

ビートルズよ永遠なれ!

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